※以下は私の個人的な考察であり正確性を保証できるものではない。
警察白書を見ると近年の犯罪率は大概の分野で以前よりも少なくなっている（とりわけ重犯罪ではその傾向が顕著である）。それにも関わらず多くの人が治安が悪化していると考えるのはなぜだろうか。
私はその原因は人々がニュースで目にする事件の数が以前と変わらないこと及び、マスメディアによるニュースでは視聴者がそれまでに見たことのない種類の事件が強調して報じられることがある一方で今までにあった種類の犯罪の減少は積極的には報じられないことにあるのではないかと思う。
今も昔も人々がテレビや新聞のニュースを見るのに使える時間には限りがあり、いつの時代も人々が一日に見る事件のニュースの数がせいぜい数個程度であることには変わりがないと思われる。そして、その程度の数の事件であれば平和になった今においても全国から探すことで容易に見つけることができるのであり、マスメディアがそれを前面に出して報道するのであれば結局は人々が目にする事件の数には変わりがないのである。従って平和になった世の中においてもマスメディアが積極的に犯罪が減少ているとの統計を示さないことには一般市民が治安の高まりを体感することは困難であると言える。
また、世間で今までになかったような事件が起きると、マスメディアは視聴率が取れることから積極的にそれを報道し、人々もまたその事件の衝撃性からそれが起きたという事実を容易に記憶に残すのである。しかし一方で、「今までにあった特定の種類の事件が減少した或いはなくなったという事実」については人々に興味を持ってもらえないことからマスメディアによって日ごろから積極的に報道されるということがなく、さらにたまにそれらの事実が報道されたとしてもそのことは悪質な事件よりも衝撃ではないことから人々の記憶にも残りがたいのである。
そうなればニュースの視聴者は依然と変わらない数の事件をテレビ等で見続けることで治安が良くなったことを感じられないだけではなく、以前になかったような事件の発生ばかりを認知することになるので、結果的に治安が良くなっていても治安が悪くなったかのように錯覚するのである。
