世界の基礎+α

世界の平和を実現するための方法を考えます

道徳的価値観の形成に影響を及ぼす人の特性

この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。

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道徳の形成にかかわる人の共通の性質は無数にあると考えられるが、私はそのうち主要なものとして「利益獲得」「損失回避」「共感性」「公平性」があると思っている。

・「利益獲得」及び「損失回避」
文字通り利益を求める性質と損失を回避する性質である。先ほどの人殺しを否定する道徳は、お互いの損失を回避する性質により生み出されたものである。

 

・共感性
人間には個人差があるもののおおむね相手に共感する性質が備わっている。人はその性質があるがゆえに他者が傷ついたときにも自身が傷ついたかのように感じることになるのである。そしてその結果、人々は自身の直接の利益とならずとも他者が苦しまないようにするための行動を起こし始めることとなる。社会で他者を傷つけることを悪とする価値観や他者を攻撃することを禁じる法律が支持されている理由は人のそのような性質にあることも多い。また、人々の共感の対象は同じ人間だけではなく動物にまで及ぶ。動物(特に人により近い形や生態を持つもの)を楽しむために痛めつけたり殺したりすることは現在多くの国で禁止されているが、それは動物への共感が働いているからである。おそらく人により近い生物であるほど人にとって共感の対象となる可能性は高くなる。


・公平性
力のある者は力のない者に対して不公平な利益の分配を押し付けることができる。そしてそのように自身の都合の良い分配を押し付けられる側の人間が、公平性を積極的に実現したいと思うことはすくない。しかしそれではなぜ今日においては多くの人が公平性の考え方を支持するのかというと、もし不公平を肯定する理屈を用いて誰かから利益を奪う者がいるのであれば、その人は自身が力のない側になったときに利益を奪われることを否定するのが難しくなるからである。

かつてのように君主制の時代であれば、為政者が自身が力のない側になることがまれであり公平性を支持する理由がないために政治においてその価値観は支持されがたい状態にあったといえる。しかし、現在の民主主義国家においては政治的に誰もが一方的に力のある側に立つことが困難であるために、人によって程度の差はあるものの多くの人がある程度の公平性を支持するようになっている。

補足1:もちろん人が公平性を求める理由は、自分の利益のためだけではない。共感性から相手に理不尽な要求を突きつけることを控えようとして公平性を求めることもある。また、相手からの積極的な協力を得るために公平性を求めることも多い。

補足2:公平性を極端に追及しすぎると、逆に多くの人にとって窮屈な世界になる恐れもあるかもしれない。もしそうであるのなら、公平性の追求は適度に抑えるのがいいだろう。しかしそれを理由として何者かが度が過ぎる不利益を被るような状態は避けなくてはならない。

 

 

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