世界の基礎+α

世界の平和を実現するための方法を考えます

政治参加

この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。

kanayamatetsuya.com


政治的判断の手法

主要問題+αの把握

人々が政治的な問題をすべて把握しておくことは、理想的ではあるが現実的ではない。しかし「政治上の主要な問題」と「自分に関係のある分野あるいは自身が興味を持っている分野の問題」を理解しておく程度であれば比較的容易に達成することができる。従って私は「主要問題+α」の把握を人々に推奨する。


知らないことがあったらその都度調べること

政治に関する知識の全てを短期間で身に着けることは不可能である。であれば、せめて分からない話が出てきたタイミングで学ぶことを継続するようにした方が良いだろう。


情報源の確保

優れた情報源はそれが存在する場所をメモしておくなどして、後から簡単にアクセスできるようにしておくべきである。情報源には、国家機関あるいは政治家や政党によって公開される文書、民間の優秀な個人や組織によって書かれたブログや書籍、各種マスメディアによって制作される記事などがある。


複数人の立場の人の話を聞く

人は無意識的に自分にとって都合の悪い考えや情報に意識を向けることに消極的になる傾向を持っている。それを是正するためには自身と違う意見を持つ他者の考えによく耳を傾けることが必要である。

何かについて調べるときは、複数の情報源を活用するように努めなくてはならない。そして、その際は、活用する情報源が同じような立場の人や組織の発信するものに偏らないようにしなくてはならない。それにより、特定の人間や組織に操られることは防ぐことができる。


継続的情報収集

情報は時間経過によって更新される。正しい判断のためには継続的に情報をあつめなくてはならない。ある考えが世間に広まった後には、その考えに対する反論や、その反論に対する反論、更にはその先まで把握することが望ましい。先述の複数の立場の人間の話を聞くという方法も継続的に実践しなければ不十分である。


特定の考えに固執しない

いかなる考えに対しても常に疑いの余地を残し、完全な確信は持たないほうが良い。自身が絶対に正しいと思った考えが覆されたときにはその記憶を大切に保管し、その後然るべきタイミングで思い起こすようにするべきである。

 

先入観で判断しない。誰が言ったかで判断しない。

何らかの考えや意見の正しさは、それらの内容自体を理解することによって判断するべきである

・先入観で判断しない
ある考えが正しいかどうかは、自身がその考えに対して最初に抱いたイメージによって判断するのではなく、その考えの内容を正確に把握したうえで判断しなくてはならない。現実には時間的な制約から常に他者の考えを十分に把握することは難しいが、その場合はせめて頭の片隅に自身が間違っている可能性もあるとの自覚を残すようにするべきである。


・誰が言ったかで判断しない
どれほど能力の高い人間であっても間違ったことをいう可能性はある。そして、人々が誰が言ったかで意見の正しさを判断するのであれば、人々が信頼する者が誤ったことを言ったときにその過ちを是正することは難しくなる。それを防ぐためにも、意見の正しさはその発言者ではなくその内容から判断することが大切である。

とはいえ、実際には、人々が専門的な内容を理解することは難しく、時には誰がいったのかによって意見の正しさを判断しなくてはならないことはあるだろう。そのため、人々は意見の正しさをできる限りその内容を理解することで判断するように努めつつも、やむを得ない場合にはその発言者によって判断することをしなくてはならない。しかし、発言者によって意見の正しさを判断する場合は、やはり相応にその判断の信頼性が低下していることを自覚するべきである。また、そのときは、複数の専門家の話を聞くことで、誤った考えを是正する機会を増やすように努めなくてはならない。


完全な判断は不可能

政治的な問題について絶対に間違いのない完全な判断を下すことは、人の能力に限界があることから不可能である。我々は完全な判断ができないなりにより正確な判断を行うように努めるしかない。また、他者に対しても完全な判断ができないことは受け入れなくてはならない。

 

余談:数の力による正しさの形成と対策

人数が多い思想集団や多くの時間を情報収集や理論構築に使える人は、自説を補強するための根拠や理屈を他者より多く手にすることができる。そしてそのことは、それらの集団や個人が実際の正しさに関係なくある物事を正しいものとして社会に広める力を有しかねないことを意味する。そのように、所属する者が多い集団やアイデアを出すことに多くの時間を使える個人の意見が通りやすくなったりするのは不可避的なことであり、ある程度はやむを得ないことであるといえる。しかし、そのような傾向が強まれば、人々は自身が言論に時間を使えない分野や自身が少数派となった問題について、自身に不利益な考えばかりが通ることを受け入れるほかなくなる。そのような事態を防ぐためにも、人々はまず自ら積極的に自身が有利な領域において他者の利益を考慮した考え方をすることをしなくてはならない。

ちなみに、有利な集団や個人となることは誰にでもありうることである。例えば、人々は自身が言論を行う空間を自身にとってより重大な領域に限定すれば、その領域において社会のより広範な問題に取り組む人々より有利な状態になることは容易である。だが、誰しも時間を無制限に有しているわけではないため、自身の利益にかかわる政治領域の全てにおいて有利な立場に立てるほど多くの時間や協力者を有する人はいないもしくはほとんどいない。だからこそ、人々は特定の領域で自身が有利な立場となったとき、そうではない領域で不利益を被らないためにも、自ら積極的に他者の利益を考慮しなくてはならない。

 

民衆としての政治参加

投票の重要性

国民は自身の投票が政治を決めるという自覚を持つべきである。投票を行わなかった者は、自身の利益となる政策を掲げる者は議会にいなくなるかもしれない。また、投票をいい加減に行った者が多いと、誤った政策を掲げる政治家が当選し、それによる損失を国民自身が被ることになる恐れがある。

投票は投票対象が当選しなかったのだとしても無駄にはならない。ある政策を支持する候補者に多くの票が集まれば、その人が当選しなかったのだとしても、その人が支持する政策を支持することが自身の当選に有利に働くということが他の政治家に伝わることになる。また、そうでなくとも当選者の得票数が相対的に小さくなれば、当選者には自身の行動を改めさせるための圧力がかかることになる。

 

投票先の判断方法

選挙において投票を行おうとする者は、まず自身が実現するべきだと考える政策を洞察や情報収集を行うことによって明らかにする必要がある。その人は、その際には、自分のことだけではなく社会の他の者の利益についても考えるように努めなくてはならない。そして、投票者が自身の考えを明らかにした後には、投票者は自身の考えにより合致する方針を持つ候補者を投票対象として選ぶと良いだろう。ただし、投票者が候補者を選ぶ際には、候補者が実際に自分が掲げる政策を実現する意思や能力があるのかどうかを判断しなくてはならない。その判断は、候補者のその政策に対する理解の深さなどを見ることによって行う。もしある政策を選挙で掲げる人のその政策に対する理解の深さが浅いのであれば、その人は実はその政策の実現に興味がなかったりそうでなくとも他の議員を説得する能力が低かったりする可能性が高いと判断できる。政治家となろうとする者が実際にどのような考えを持っているのかについては、その人のブログやSNSなどを確認すると良いだろう。もし、まともに自身の考えを公開していない候補者がいるのであれば、その人は投票されるに値しない。

また、以上はいくらか能力を参考にする側面があるとはいえ基本的に候補者の支持政策や思想をもとに投票先を選ぶ方法であるが、実際に民衆が投票先を選ぶ際には純粋に候補者の能力自体を評価することも行った方がよいかもしれない。何故ならば、自身の思想にいくらか反しているが能力の高い者を政治家として選んでおくと、その人が自身が詳しくない問題や誤解をしている問題に対して自身の代わりにより良い判断を下してくれる可能性が高くなるからである。


・民衆が能力の高い候補者を選ぶ方法
民衆が能力の高い者を選挙で選ぶためには、民衆自身ができる範囲でより多くより正確に政治についての勉強を行うことが大切である。確かに民衆自身には政治がどう行われるべきかということを判断するのは難しいが、それでも勉強を行い学術的に正しいことが確実となった事実を多く把握すれば、それに反する主張を多く行う者を投票対象から除外することによって、明らかに正しい判断をする能力の低い者については政治家として選出されないようにすることができるようになるだろう。ただし、民衆の認識の方が間違ってることはやはりあるため、民衆は自身が間違っているように感じる主張を行う候補がいるとき、直ちにその候補が誤っているのだと考えるのではなく、その候補がどうしてその主張を行っているのかをできるだけ把握するように努めるべきである。また、間違ったことを多く言っていても他で優れた考えを持ちなおかつ他者の話を聞いて自身の考えを改められる者については投票対象から除外するべきではないし、何も言わないことで間違ったことを言わずに済んでいるだけの者に対しては投票対象とするべきではない。


・投票してはならない候補
まず、他者の意見を聞く気がなかったり自身に対して批判が行われたときにそれを怒りから無視するような人間は政治家にするべきではない。なぜならば、そのようなことを行う政治家が増えると、実施すべき政策が議会で賛同を得られなくなり実施できなくなるからである。

そして、時折のうっかりではなく常習的に対立者を罵倒する候補にも人々は票を投じるべきではない。何故ならばそのような人間は、自身の非が指摘されたときに、自身が今まで行ってきた罵倒が自身に跳ね返ることを恐れて、その非を認めることができないからである。政治家が他の政治家の考えや行動の問題点を指摘することは大切なことであるが、それを行う際に悪意あるいは怒りの感情から相手を攻撃するための言い回しを採用しているものは政治家に向いていない。また、対立勢力の身の安全を脅かすような発言を行ったりする者は断じて政治家にするべきではない。そのようなものが権力を握れば民主主義が破壊されるからである。


・無名候補への着目
投票の際には無名の政治家にもできるだけ着目するよう努めるべきである。候補者は能力があっても無名であれば当選のために知名度を上げることは難しい。国民が自ら無名の候補にも目を向けるようにすることでその手間を省くことができ、優秀な人間が本来の仕事に集中しやすくなる。


・表面的あるいは瞬間的な感情や印象ではなく理性で判断する
人々の心に響く演説を行う者がいたとしても、その演説の内容やその人の言うことが正しいとは限らない。人柄がよく見える者がいたとしても、その人はただ表面を取り繕う能力が高いだけで、内面は私利私欲にまみれていたり攻撃的であったりするかもしれない。人々は、そのような者に騙されないためにも、理性によって人物への評価や物事の是非の判断を行うことを重視しなくてはならない。社会には表面的な感情で動く者が多いからこそ政治家が人の心を動かす技術を身につけなくてはならない状況はやむを得ないものである。しかし、民衆は優れた政策を考える時間を減らしそのような技術ばかりを磨いてきたような者が政治家となることを防ぐためにも、正しい投票先を候補者の有する思想や掲げる政策をもとに決めなくてはならない。演説能力は、本来、最低限のものを除き、おまけとして政治家に有されていればよいだけの能力に過ぎない。なお、十分な洞察によって正しさが検証された感情に基づき物事を判断することには問題はない。


世論への働きかけ

・投票推奨
自身が支持する政党や候補者の得票数は、自身がそれらに投票することだけでなく、自身の周囲の者を説得してそれらに投票してもらうことによっても増やすことができる。このとき、特に親しくもなく、政治的な対話を行うきっかけもないような相手に対しては、SNSやその他の手段での投票の呼びかけを行うと良い。

ただし、他者に特定の候補への投票を呼び掛ける際には、思い通りにならないからといって憤ってはならないし、よっぽど緊急性の高い場合を除き相手が変わるまで議論を行おうとするのはやめた方がいい。人々がするべきは、自身が政治に使える時間の範囲で、自身の意見と自身がその意見を持つ理由を示すことと、相手の意見と相手がその意見を持つ理由を確認することであって、相手を変えることではない。また、対話の際には、相手が間違っているという物言いを避け、より良い選択肢があるという言い方で相手を変えようとすることが望ましい。

他者に特定の候補への投票を推奨する際には、それを推奨する理由についてちゃんと説明することが大切である。自分一人でその理由を組み立てることが無理なら、インターネットなどを通して他者によってまとめられた情報を確認することで対処することができる。十分な理由を説明できなかったりうっかり自身に怒りが生じ始めたりした場合には、とりあえずその場から退きまた後日説得を行うようにすると良い。対話の過程で相手の方が正しいことが明らかとなったなら十分な検証を行ったうえで自身の立場を変えるべきである。


・政治に関する情報の発信
政治に詳しい者がどういった政策を実施しなくてはならないのかについてわかりやすく解説することで、人々が正しい政策を支持することは促進され、人々が実施すべき政策のそれを実施しなくてはならない理由を他者に説得力のある形で説明することが容易となる。


・選挙に関する情報の発信
特定の政策を政府に実行してほしい人は、その政策の実行を目指す候補が誰であるのかをSNSやブログ等で発信することで、自身以外のその政策の支持者により確実にそれらの候補に投票させることができる。ただし、情報の受け取り手は誤った情報に騙されないようにするためにも、情報源は複数活用し、実際の政治家自身の発言などを調べることで情報が歪曲されてないかを確認するべきである。


政治家や政府への働きかけ

・世論を盛り上げる
人々のうちの一部が自身が重大だと考える特定の問題について積極的に情報発信をすることで、他のより多くの人々もその問題について議論する状態を作り出すと、その問題が政治家の目に触れ政治家がそれに対して何らかの対策が取る可能性は高くなる。

・直接的な対話、目安箱
常に可能であるとは限らないが、時と場合によっては政治家と直接対話したり、政治家によって提供される民衆が政治家に意見を述べるための場(目安箱など)に意見を投稿したりすることで、政治家の選択に影響を与えることが可能である。

・デモ
デモをすることによって人々の主張や意志を政治家に示すことも可能である。ただし、デモの際に暴力行為や破壊行為、略奪を行うことは認められない。そのような行為が行われる運動はデモではなく暴動である。民主制の採用によってせっかく紛争の解決手段を法の違反者に対する処罰の場合などの例外を除き非暴力に限定しているのに、自分だけはそれに違反するというのは独善的で道徳的に正当化し難い。


・非暴力不服従
非暴力不服従はその規模が大きくなるほど、そしてそれが多発するほど社会に生じる損失も大きくなる。また、非暴力不服従は普段から何らかの形で政府や社会にとってより重要である仕事を行っている人々によって行われたときにより大きな効果を発揮するが、そのことからは非暴力不服従を行うことを安易に肯定される社会では、それらの人々の政治的権力がほかの人々より不当に強くなることが予測できる。したがって、選挙権の行使や言論の自由が保障されている民主国家にいる場合には、政治的な要求を通すことを目的として非暴力不服従を行うことには慎重になるべきである。民主国家でそれが容認される場合の例としては、多数派とその支持を受けている政府が明らかに不当に少数派の権利を大きく侵害しているような場合(アメリカで起きた公民権運動などがこれに当てはまる)があげられる。

 

政治家としての政治参加

立候補

政治家になりたい者は選挙期間中のみの努力によって勝とうとせず、選挙に立候補する前の段階から何らかの手段で知名度を上げたり支持者を増やしたりしておくことで、より当選する可能性を高めることができる。とはいえ個人の力ではやはり限界はあるため、無名に近いが実力があるような者はまずは自身の方針と合致する政党に所属し、そこで候補者として認められることを目指すのが現実的だろう。

・公約
選挙の候補者である政党や個人は、人気取りのための政策を掲げてはならない。選挙に当選したい者は、正しい政策を掲げたうえで、それへの民衆の支持を広げることによって当選を目指すべきである。立候補者は支持を集めるために誤った政策を掲げることは極力避けなくてはならない(とはいえ本当にそうせざるをえない場合は、最低限民衆の支持を得るための政策を掲げることもやむを得ない)。


・情報発信
選挙に立候補するものは、自分の考えをどこかに公開しなくてはならない。そのための手段としては、ブログや動画配信サイトのチャンネルの開設、書籍の出版等が考えられる。そこでは、自身の方針の概要を載せると同時に、より情報収集に熱心な者のために、自身が支持する政策の詳細を載せることが望ましい。確かに細かい解説など読んでくれない人がほとんどではあるが、それでも有権者の判断材料を提供することには大きな意義がある。私としては、政治家の候補には、断定的な主張の仕方を避けても良いので、現段階でどういう理由でどういう政策を支持しているのかをより広範に乗せてほしいところである。

 


洞察

・徹底的洞察
真に優れた政策は、書籍やネット上で調べた良さそうに見えるアイデアをつなぎ合わせて表面的な整合性を整えただけでは編み出せない。本当に実施するべき政策というのを明らかにするためには、社会や政治について既にふれた根底疑念を行うことで徹底的に把握したうえで、考え得るおおよそ全ての政策の候補を明かにし、その中から最善の政策を選択することが必要である。むろん現実には時間的な制約からそれができないことも多いだろうが、その場合は自身が質の低い考えを有している可能性が高まっていることを自覚しておくべきである。
 


・長期的視点
政治家は目先の問題だけでなく将来に発生するであろう問題にも対策を考えそれを実施しなくてはならない。世の中には発生してからでは対処しきれない問題があり、それに対処するためにはそれが起きる前の時点で対策を行うことが必要である。そして、現政権が長期視点に立った政策を実行したとき、その政権は後の政権がそれを正しく引き継げるようにするためにも、その政策に関する意図や情報を可能な限り正確かつ詳細に公開するべきである。次の政権の失政を招くためにそれらが行われないことは断じて容認できない。

また、政権交代が起きたとき、新たに成立した政権は前政権を否定することを目的として、前政権の長期視点に立って行われた政策を否定してはならない。それを否定することが認められるのは、そうした方が人々のためになることが公正公平で十分な検証によって確認できたときだけである。新政権は前政権の政策の継続が自身の価値観に合致しないのだとしても、その撤回がその継続以上に多くの問題を生じさせるのであれば、それを継続しなくてはならない。

 


学習、情報収集、経験

長いとは言えない政治家の任期で意味のある働きをするには、政治家になろうとする者が政治家になるまえの段階からできるだけ政治家として活動するために必要な教養と経験を身に着けておくことが必要である。

・学習
政治家はジェネラリスト(多数の分野に詳しい存在)でなくてはならない。議会の議員の数は有権者の数に対してずっと小さく、有権者の意思をより多く議会に反映するためには各議員が多数の分野について把握することが必要である。500人の議員からなる議会において、各議員がそれぞれ1分野のみを代表する場合、議会が代表する分野は多くて500である。しかし、各議員がそれぞれ2分野を代表する場合、議会が代表する分野は多くて1000となる。

政治家は政治に関する知識として「政治の各分野の基礎知識」「時事問題に関する知識」「自身が専門とする分野の専門知識」を最低限把握しておく必要があり、更には「一般的な教養」も重大なものについては身に着けておかなくてはならない。政治の各分野というのは、「政治思想(※1)」「政治体制」「法」「財政」「国土の開発及び管理」「経済(+農林水産業に関する分野)」「社会保障」「文化政策(科学、教育、文化)」「地方政治」「外交(地政学含む)」「安全保障」「歴史」等である。時事問題に関する知識には、例えば政治の各分野で生じる現代特有の問題やそれら以外の現代特有の問題(環境問題等)に関する知識があるが、それらを一人で調べ上げることが難しいなら政党やその他の組織を結成しその内部で手分けして調査をするなどして対処するべきである。

※1:私が執筆する書籍では性差別や人種差別に関する思想などはこちらに含まれるものとする。また、古い時代の政治体制論や政治思想史なども歴史ではなくこちらに含めてよいだろう。

・情報収集
自身が何らかの政治的な問題に対処しようとするときには、その問題にまつわる歴史的な動きの概要や、その問題に対する近代以降に行われた議論の重大な内容についてはできるだけ網羅的に把握するようにした方がよいだろう。何故ならば、そうすることで自身が労力をかけずに先人によって編み出された優れた問題への対処法を把握したり、すでにうまくいかないことが明らかとなった問題への対処法を再び実行することを避けたりすることができるからである。また、情報収集の際には自国の情報だけでなく他国の情報についても調べる価値がある。

なお、未来の時代になればなるほど記録に残る過去の事例の数は増えていくと考えられるが、それを無理に全部把握しようとする必要はない。過去の情報が増えれば増えるほど専門家はその要点をより端的にまとめた情報源を作り出すと考えられるが、政治家が調べる情報は近現代のもの以外にはそれで十分である。専門家が歴史的動きの情報をまとめる過程でどうしても重大な知識が省略され、さらに政治家が省略された部分の詳細を調査することのコストがリターンに見合わないほど大きくなったのであれば、その部分については自力で最発明することで対処すればよい。


・経験
政治家となるために必要な経験を積む方法としては、政治家の秘書となったり、地方議員となったり、官僚となったりすることが考えられる。各政党が党内で次世代議員の育成を行うための制度を作り、政治家になりたいものが政党に所属してその制度を活用するというのもありだろう。また、ここでいう経験というのは主に政治的な活動に関するものであるが、それ以外の経験を獲得することも政治界に新たな見解をもたらすことに繋がるため決して無意味ではない。

経験こそ不足しているが他の点では極めて優秀である者は、いきなり政府の重要な役割を担うことは無理でも、議会の一議員となる程度のことは問題なくできるだろう(逆に経験だけはあるが教養がないような人間は政治家になるべきではない)。ただし、その場合は、事前に具体的に政治家となったときに何をするべきであるのかということを把握し、いざ政治家となったときにそれを容易に実行できるようにするための努力をしておくべきである。例えば、政治家として活動したことのある者が書いた本を読むことは、疑似的に経験を積む手法として活用できる。


・専門家の活用法
政治家は、政治家自身が自ら何らかの政治的な問題への対処法について専門家に相談しようとしたときや、専門家が自発的に社会の問題を見抜きそれに対処することを政治家に促そうとするときに、専門家の提案を聞くことになる。

専門家の提案の形式の一例としては、「○○すると△△(問題が解決された状態や人々にとって望ましい状態)となる。だから○○した方がよい」というものが考えられる。しかし、その提案の○○をすると△△となるということが本当に正しいとは限らないし、△△の状態が実は専門家の利益とはなっても民衆の利益とはならないようなものである可能性がある。以上のような専門家の提案に間違いや嘘が含まれるリスクに対処するためにも、政治家はできる限り専門家の主張の内容を完全に理解し、更にその正しさを徹底的に検証するように努めることが大切である。そうすれば政治家は専門家がその提案内に自身の判断ミスや私利私欲から生じさせた不確実性やごまかしに騙されないようにすることが容易となるだろう。また、そうすることは、政治家が専門家による提案内に存在する民衆の利益に反する過程や結果に気づき、それを是正できるようになることにもつながるだろう。実際には、政治家が自身が判断するすべての物事について専門的な内容を完璧に理解することは難しいかもしれないが、それでもできる範囲で完璧な理解を実現するようにしなくてはならない。

ちなみに、専門家による提案中の○○をすると△△となるという部分について、なぜそれが事実であるといえるのかを明らかにするためには、まずそれが事実であることを証明する信頼性の高い実験や研究があることを確認することが考えられる。そして、それ以外の方法としては、○○をすることで△△という結果が導かれるときの具体的な流れを把握することが挙げられる。それを把握すれば、その流れの途中に、起こることが確実ではない動きや人々のためにならない動きが含まれていることを見抜ける確率が上がる。

政治家は専門家に相談する際には、どの分野についてもできるだけ複数名を相談相手とするようにしなくてはならない。そうすることで、誤った提案をされてもそれに気が付ける可能性を高められる。また、専門家の間でも意見が分かれるような問題については、複数の立場の専門家に話を聞くようにすることが望ましい。ただし、そもそも専門家が育っていなかったり、専門家集団が特定の思想を持つ派閥に支配されていたりすると、専門家からなされる提案も間違っていたり偏っていたりする可能性が高くなる点には注意しなくてはならない。国家が専門家として支援する対象はそれらの人々が税金によって支援される以上はある水準を上回る実力と意欲を有している者に限定するのはやむを得ないが、専門家集団内において一部の学術思想しか認められないような状態を防ぐためにも、政治家が優秀とみなした一部の人間に全学術機関への絶対的な統制権など与えないようにするべきである(※1)。なお、国家が最低限の実力すらないとみなしたが実は優れた考えを持つ者については、せめて民間の言論や学問の自由を認めることで完全につぶさないようにすると良いだろう。

※1:支援対象の集団にある程度の質の低い研究者がまぎれることになってでも、学術への支援は広く行うようにするべきである。ただし、あまりに質の低い研究者ばかりが支援されるような状態になった場合は、さすがに支援対象を絞らざるを得ないだろう。

 

 

対話の力

※以下は対人関係能力が壊滅的であり、対話の経験も著しく少ない私の脳内考察のまとめである。

政治家にとって対話の能力は必須である。対話の能力というのは、後天的な努力によって十分に高めることができるものである。むしろ才能任せの対話力は安定性がないため危ういと考えられる。対話の能力としては「主張するべきことを的確に分かりやすく主張する力」「他者を説得する力」「他者の信頼や好意を勝ち取る力」「人前で話す力」「外国語(現在の世界では英語)を話す力」等がある。対話の手法はそれを開発あるいは把握した後は、実際に試すことで検証したり確実に身に着けるようにしたりすることが大切である。

対話の各場面でより良い発言をするためには事前準備が大切である。自身が将来に直面するであろう対話の状況ごとにどういった対処を行うべきかを事前に明らかにしておけば、実際にその状況が来た時に焦らずに適切な選択をすることは容易となる。例えば、政治家は事前にどのような質問が来たらどのように返答するかを考えておくようにした方が良いだろう(※1)。もし自身に対して行われる可能性がある全ての質問について事前に具体的な返答を明らかにしておくことは無理でも、それらの質問を大きく分類しそのそれぞれについて受け答えの大体の方針を定めておくことぐらいはできる(※2)。そして、そのような努力をしておけば、自身に何らかの質問がされたときに、焦らずにそれに答えられるようになる。

多数の人の前で話す際には、事前によく練習をしておくことが大切である。特に重大な演説を行う際には、その内容を完全に暗唱できるようにしておいたり、実際にもしくはイメージ上で目の前に人を集めてそこで本番と同様の流れを何度も行っておいたりすることが望ましい。そうすれば、実際に演説を行う際に話の内容を忘れて焦ることや、聴衆自身を見ずに紙面ばかりを見て話すことを避けることができる(※3)。なお、練習の際には、単に話の内容をスムーズに思い出せることばかりではなく、身振りや表情、話す速度、声の聞き取りやすさなどにも意識を向けなくてはならない。また、いきなり大人数を相手に話すのが難しいようであれば、その前に少人数を相手にした演説や講演等を何度も行うことによって徐々に経験を積み自信をつけると良いだろう。事前の努力をしても演説や講演の途中でミスをしてしまった場合は、変に焦ったり茶化したりせずただ話すべきことを話すように努めるべきである。失敗はその大小を問わず誰にでもあることであり、それを恥じる必要はないし他者の失敗を馬鹿にしてはならない。

演説や講演の内容の典型例(これは典型例に過ぎず絶対的なものではない)は、まず話の冒頭で自然に話を始めるための言葉を入れ、次に自身の考えの概要や自身が至った何らかの結論を示し(この段階は短時間話すだけであればない方が良いこともある)、その後自身の考えの詳細や自身が至った結論が導かれる過程を順次明らかにし、最後に話の要点や結論を簡潔にまとめて再度述べたり今後の自身の方針や聴衆への呼びかけを行ったりするというものである。話の内容は伝えるべきことをより簡潔により分かりやすくまとめることによって定める。それだけでは十分な文量を確保できない場合は、洞察によって自身が何を伝えるべきであるのかをより具体的にすることで問題に対処すべきである。また、予定より早く話し終わってしまった場合に備えて、本来話すつもりであった内容とは別に話す内容を用意しておくことも時として必要である。逆に話が時間内に終わりそうもない場合に対しては、どこを削るのかを決めておくことで対処することができる。

演説の内容を聴衆の記憶に残したければ、演説中に重大で分かりやすく印象深いキーワードを適度に繰り返し述べるようにすると良い。聴衆に自身の演説の内容に興味を持ってもらいたければ、その内容が聞き手の人々にとって価値のあるものであることを示せばよい(それは明示的ではない方法によっても行うことができる)。聴衆を感動させたければ、話に物語性を持たせることが考えられる。ただし以上の努力は常に求められるものではない。時には聴衆が興味を持てないような事実を余計な情報を交えずにただ示すことが重視されることもある。普段から深い洞察や徹底的な学習を行なわない者に名演説をすることはできない。それを行うからこそ人々にとって価値のあることを語ることができるのである。

どうしても講演の内容についてのアイデアがわかない場合や政治的に重大な演説を行う場合などには、一人で話の内容を考えずに他人(できれば専門家)の力を借りることが大切である。他者の力を借りるということの内には、優れた講演や演説を行う他者の技術を参考にすることも含まれる。また、政治家となることを目指すものは人前で話す必要性が出る前の段階からある程度それを行うための技能を身に着けておくことが理想である。可能であれば技能の面で信頼のおける専門家から教えを受けることもしなくてはならない。


※1:例えば時事問題については、既にふれた通り多人数で協力することで網羅的に把握することができるが、そのことはそれらの問題に対する質問に答えることを容易にする効果がある。ただし、もちろんそれでどうにかならない場合も想定はしておくべきだし、自分なりに考察を行うことで集団の意見とは違った主張を行うことも必要に応じて行わなくてはならない。


※2:自身が用いる返答の内容のひな型や返答をその場で作り出すための手法や流れがその方針の内に含まれる。それらの方針は、自身が詳しい分野に関する質問、自身が詳しくない分野に関する質問、全くされることが想定外である質問などに対して別個に定めるといいかもしれない。

※3:演説を短期間に何度も行わなくてはならないような立場にいる者は、その内容の全てを暗記することが難しいこともあるので、その場合は演説の本当に重要な部分だけに暗記する部分を絞りそれ以外の部分は無理に何も見ずに話そうとするのを諦めたり、話の大まかな流れや要点とそれらの紙面上の位置だけは把握しておくようにするなどして極力メモを見直す回数を少なくしたりすることに主眼を置いた方がよいかもしれない。

意思決定基準

・国政を担う政治家は国民全体の利益を考えて行動しなくてはならない。何故ならば、そうしなければ、国民のうち自身が選んだ代表が議会の主導権を握らなかった集団が、自身の利益を無視した政治が行われるというリスクを負わなくてはならなくなるからである。ただし、社会において民衆の一部の層が他よりも不当に悪い扱いを受けている場合に、政治家がその層の待遇改善を積極的に推進することに問題はない。


・政治家が、自身が支持する政策を選挙時に掲げていたものから変更することは容認されなくてはならない(ただし、このことはあまりに的外れで無責任な政策を多く掲げていた政治家を批判してはならないことを意味しない)。何故ならば、それが容認されない場合、政治家は誤っていることが判明した政策を支持し続けなくてはならなくなるし、議会において意見がまとまらないことで政策の実施が困難となるからである。ただし、民衆が自身の望みを政治に反映する機会を簡単に奪われることのないようにするため、政治家が自身が支持する政策を選挙時に掲げていたものから変更する際には、通常以上に多くの洞察や検証を行ったうえでそれを行わなくてはならない。また、自身の支持政策を変更する場合も、新たに支持する政策をできるだけ自身の支持者が求めていたであろうものを反映したものとするようにしなくてはならない。

・政治家にとって周囲からの圧力に負けずに主張するべきことを主張することは義務である。人々にとって重大な問題であればあるほど、情報収集と洞察に多くの時間と労力を割いて、その問題に適切な対処を行うことを否定する勢力を説得するようにしなくてはならない。

・政治家は、時に国民のために支持率が下がることを承知の上で特定の政策を実行しなくてはならないことがある。ただし、その場合も政治家によるその政策についての説明は、誠意をつくして行われるべきである。

・場合によっては国民の賛同を得るまで実施しないほうがいい政策もある。しかし、人権侵害の程度が大きな問題については、国民の賛同を得る前であってもそれを解決することが必要である。ただし、その場合も、人々の賛同を得ない決定をすることが社会秩序に甚大な損害を与え、その決定をしなかった場合以上の惨劇を人々にもたらす場合、その決定をしないようにしなくてはならないことがあるかもしれない。

・国の政治家は国民に国民のための政治を行うことを条件に権限を付与される。また、特定の国の政治家が、他国の政治家が他国民のことを優先的に扱う中で、自国の国民と他国の国民を分け隔てなく扱うのであれば、その国の国民ばかりが守られないことになる。従って、政治家は、国政を担う者として働いているうちは、他国ではなく自国の国民の利益を基準に政策を決定するべきである。むろん、自国のためになるのであれば他国の支援を行うことは認められるし、やむを得ない場合には国民の支持が得られずともそれをすることは認められる。しかし自国の十分な利益をもたらすわけでもないにも関わらず他国を支援する場合には、国民の支持を取り付けてからそれを行うようにしなくてはならない。自国民の中に自国の利益とならずとも他国を支援してほしいと思うものだっているはずなのだから、負担の小さな支援策については多数の国民の賛同があることが明らかでない場合でも実施することは妥当ではある。しかし、負担が大きな支援であればあるほど相応に大きな規模の賛同を得てから行うべきである。

ただし、緊急性が高く支援しない選択をしたときに生じる他国民への被害が著しいものである場合、自国民の利益にならず国民への負担が小さくないのだとしても、国民の支持を待たずにそれへの支援を行うことを検討する余地がある。しかし、その場合、できる限り国民の負担を最小限に留めるようにしつつ、予測される国民の支持の程度の小ささに応じて抑制的な対応策を採用するようにすることを最低限行わなくてはならない。また、そのような努力をしてなお自国民に生じる負担が著しいものとなっているのであれば、やはり、国政を担う権限や国家の資産は私物ではないことをよく理解し他国を支援しない選択肢を検討することが必要である。


協力的であること

政治家は対立勢力を決して罵ってはならない。そのようなことをすれば、対立勢力の協力を得られず実現するべき政策を実現できないことが多くなる。誤った言動に対しては罵倒ではなくただそれが誤っていることを示すことによって対抗するだけでよい。

また、政治家は自身を批判した者に対して腹を立てて、その人の話を聞かなくなったりその人と協力するべき時に協力しなくなったりしてはならない。政治家も所詮は人間であるためたまにうっかりそういった態度をとってしまうのは仕方がないことであるが、そのような態度を改めなかったり、そのような態度をとることを何度も繰り返したりする者はそもそも自身に政治家になる資格はないということを自覚するべきである。


妥協を覚えること

◇妥協の必要性
議員は原則として特定の政策に賛同するかどうかを戦略的な理由ではなくその正しさによって判断しなくてはならない。他勢力が何らかの政策の実施についての賛同を求めてきたとき、その政策が正しければそれに賛同し、それが間違っていればそれを否定するあるいは間違った部分の修正を行わせたうえでそれに賛同するべきである。また、自身が推進する正しい政策が議会での支持を得られていないときには、その正しさをほかの勢力に説明することでその支持を得ることを目指すべきである。むろん以上の過程では、自身の正しさの認識が間違っている場合にはそれを是正しなくてはならない。

しかし、議論を尽くしても議会の意見がまとまっている状態を常に容易に作り出せるとは限らない。その結果、社会に何らかの問題が生じたとき、それに対する対応策のいずれについても議会の過半数に正しいと判断されない状態が続くことがある。そして、実際にそうなった場合、各議員が正しさによってのみ政策の実現の是非を判断するのであれば、その問題への対処がその問題に対処しなくてはならない期限までに何も行われない恐れが生じることになる。そのような事態を回避するためにも、議会の議員は必要に応じて、自身が正しいと信じる政策の実現を一部諦めることすなわち妥協することによって、より広い支持を得られる政策の提案を行なったり他勢力の政策案に賛同したりしなくてはならない。妥協を一切行う気のない者はそのような調整を行えず、国家機能の停止をもたらしかねないため、議員となるのには向いていない。

◇妥協の手法
以降では、各勢力にとって実現を諦めることができない事項を重大事項、そうではない事項を準重大事項と呼ぶこととする。各勢力が妥協を行なおうとする際には、それらは自勢力が実現するべきであると考えるものごとの内、より重大ではないものの実現を諦める代わりに、より重大であるものの実現を他勢力に認めてもらうことを目指すことになる。相反する重大事項を持つ勢力同士は妥協できるものを妥協したとしても合意に至ることはできないあるいは極めて困難であるが、そうでない勢力同士は、それぞれが正しいと判断する政策に差異があるのだとしても、準重大事項についての妥協を行うことで、双方の重大事項を網羅する政策案について合意に至ることが可能である。従って、ある勢力が最初に交渉の対象として選ぶのは、重大事項が自身の勢力のそれと両立すると考えられる勢力である。

二者間の交渉の際の手順としては以下のものが考えられる(※以下は交渉の素人による短時間の考察のまとめであるため過信してはならない)。なお、議会の勢力同士の交渉は、議会に何らかの法案が提出された後のみに行われるのではなく、その前の段階に行われることもある

・まず二者の内の片方が他方の要望を確認する。そしてその要望のうち自身の要望により反さないものを自身の政策案に反映させ、それによってできたものを相手に提示する。それが受け入れられない場合は、さらにより多くの相手の願望を自身の政策案に反映させることを検討する。ただし、こちらばかりが妥協させられることを防ぐため、もし相手が自身の些細な要望のためにこちらに大きな妥協をさせようとしているのであれば、その妥協は差し控えるべきである。こちらが行う妥協が大きなものであればあるほど、相手にとってのそのことの必要性は相応に大きくなくてはならない。逆に、修正された政策を提案される側は、相手の案が妥当なものであればそれを受け入れるようにしつつ、それが自身の要望を過小に反映したものとなっていると考えるのであれば相手に更なる是正を求めると良いだろう。

・最初に交渉を行う二者間が協議を行いお互いの重大事項を盛り込んだ政策案を作成する。そして、それぞれの準重大事項について、そのなかでもより重大なものから順に政策案に盛り込んでいく。その過程で双方の利害が合致しない事項が生じた場合には、まず説得によって片方がもう片方を変えることを目指し、それによって対立が解消されない場合はどちらかが無条件にあるいは他の事項で相手に譲歩してもらうことを条件に、その事項について自身の方針を押し通すことを放棄する。

ここまでの努力をしてなお各勢力が合意に至れない場合、それらの勢力は、問題の解決を放置するか、更なる説得に励むか、重大事項の妥協を行うことによって問題に対処することになる。重大事項は妥協できないからこそ重大事項なのであるが、それを妥協しない場合に更なる問題が生じるような場合や自勢力の考えが完全に無視される結果になるだけの場合には妥協せざるを得ない。とはいえ、理想はやはり粘り強い説得により相手を変えることである。


◇不当交渉勢力への対処
議会には社会に早急に対処しなくてはならない問題が生じた状況において、自身の主張を最大限に押し通すためにわざとその対処のための政策の実施に賛同せず、それに賛同する条件として自身の主張を受け入れることを提示する者がいるかもしれない(※1)。また、議会の勢力には独善的な価値観によって、国民の利益にならない政治を行なおうとするものもあるかもしれない。

良識ある勢力は、ときにはやむを得ずそのような勢力に対して大幅な譲歩をしなくてはならないこともあるが、それらの勢力の横暴を防ぐためにもやはり簡単にはその要求をのまないように努めるべきである。そして、国民は実際には何が正しくて何が独善であるのかを見抜くのが困難であるのだとしても、できる範囲で議会の勢力の内正しい政策を自身の独善的な価値観から頑強な態度で拒絶する勢力はどれであるのかをより正確に判断し、次以降の選挙でその勢力への投票を避けるようにしなくてはならない。

・戦略的過大要求

交渉を有利に進める手法としては、交渉の開始時点に交渉相手に提示する要求を自身の本来の要求以上に大きくするというものがある。そのようにすると、自身が本来相手に求めるつもりがなかった事項を譲るだけで、自身の要望を相手に飲ませることを試みることができるようになる。交渉を受ける側は、相手のそのような戦略によって相手ばかりが自身の本来の要望を満たすことになる事態を防ぎたければ、相手の戦略的過大要求分について相手がそれを妥協してもこちらがそれに応じて妥協することをしないと決めて置いたり、こちらも最初から交渉条件として相手の大幅な譲歩を求めて置いたりすると良いだろう。

ただし、そもそも以上のような戦略によって不当に自身の要求を過大に実現しようとすることは、長期的に見れば交渉相手の信頼を損ねる恐れがあるため実践しないことが望ましい。特に政治家は自身やその支持者だけではなく国民全体の利益の獲得を目指すべき存在であり、自勢力以外の利益を過少化しようとすることはするべきではない。また、双方が成熟した交渉力を持つ場合には、過大要求をしても利益は生じず意思決定の時間をいたずらに増加させる結果を招くだけである。

※1:民主的あるいは道徳的観点からどうしてもそうする必要である場合には、「ある勢力が正しいことが明らかである政策にあえて反対し、それに賛同する条件として何らかの主張の受け入れを要求すること」は正当化する余地がある。


◇妥協と権力
議会に存在する勢力(政党)がいずれも小さなものである場合、議会の各勢力は、そのうちに妥協しない勢力が存在したとしても、それ以外の勢力との協力を目指すことによって、実施すべき政策を実施することができる。そして、そのことは、議会の機能の停止を防ぎ、更には妥協しない勢力が自身の要望を押し通すために妥協することを促進する。それに対して、議会において全議員の半数を超えたりそれに近い割合に達したりする数の議員を有する勢力がいる場合、その勢力が独善的な価値観によって妥協を拒んでもそれを抑止することが困難となる。何故ならばその場合の議会の少数派勢力は発言権以外の政治的な権力が実質的に影響力を有さない状態あるいはそれに近い状態になるからである。そのようにして議会に影響力を有さない民意が増大することを防ぐためには、議会において一つの勢力が過大な力を持つような選挙制度を採用しないようにすることが大切である。従ってやはり選挙制度には比例代表制を採用し、ドント式のような多数派の過大化をもたらす議席分配方法は用いないようにすることが推奨される。また、本著の国会体制の部分で解説した党議拘束の強制力を緩和することも大切である。そうすれば、議会の大きな勢力が独善的な意思決定を行なおうとしたとき、他勢力はその内部の勢力の離反を促進することによってそれに対抗することができる。

なお、特定の政策を支持する勢力が議会の過半数に達している状態であっても、その勢力はそれ以外の勢力の意見を積極的に確認し、そこに有意義なものがあればそれを取り込むようにしなくてはならない。もしそれが不十分であると考えられる場合には、優勢な勢力に所属する議員はその勢力から離反してでも自身が支持する政策の実行を保留する判断を下すべきである。議会の勢力はいずれもできる範囲で自身の支持する法案を全会一致に近い状態で可決することを目指さなくてはならない。多数決による議決は時間的制約からやむを得ず採用される最終手段に過ぎない。

 


政治家としての責任

政治家は他の多くの人の生活や命を背負っているため、責任感を持って仕事に取り組まなくてはならない。中途半端に仕事を投げ出してはならない。国民に対する説明責任を果たさなくてはならない。不正を働いてはならない。失言には一般人以上に気をつけなくてはならない。必要な行動は実際に起こさなくてはならない。

 

上記以外の様々な政治参加手段

政治参加の手段としては、ここまでに述べた一般民衆や政治家としての参加以外の方法もある。その具体例は以下のとおりである。

・政党関係者あるいは政治家の秘書として活動する
・官僚となって国家の政策の立案に携わる
・何らかの政治に関わる分野(大概の学術分野は何らかの形で政治に関わる)の専門家となり、人々にその分野に関する知識を提供したり政治家への助言を行ったりする
・市民団体を結成し、政府によって対処されていない問題に取り組む
・ジャーナリストとなり、人々に情報の提供や政治の解説を行う

 

 

 

 

 

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