世界平和実現構想+α

世界の平和を実現するための方法を考えます

官僚及び公務員あるいは公的機関について(未完成)

この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。

kanayamatetsuya.com

 

公務員とは、官僚とは、公的機関の必要性

どれほど優秀な人間であっても脳と身体はそれぞれ一つずつしかないため、一人で国や地方の全ての政策の詳細を考えたりそれらを実施したりすることはできない。為政者の人数が多少増えたのだとしてもそのように処理能力や実行力に限界があるという点については同様である。従って政治家が実際に社会に動かそうとする際には自身の政策の立案の補佐をしたり自身の手足として動いたりする人々あるいは組織を確保する必要がある。

公務員とは国や地方政府、あるいは国際機関等の職員として働く者のことであり、広義には議会の議員、首相や大統領、裁判官等もそのうちに含まれる。しかし、以下では話をわかりやすくするために基本的にはそれらの手足となって働く人々に限って公務員として扱うものとする(この次の節で詳しく解説する軍人についてもそのうちに含まれる)。また、官僚という語は公務員の中でも国の政策の立案に深く関わる者を示すものとして使用する。

 

公的機関の設計と設立

公的機関と権力分立

権力分立を機能させるためには、すでに述べた通り、公的機関が憲法や民主主義の精神によって定められる正当な機関や命令のみに従う状態を作らなければならない。そしてそのためには、「公的機関の設立権」、「公的機関の人事権」、「公的機関に対する命令権」のいずれについても分立された権力機関の一つに過度に集中させないようにすることで、一部の権力機関による公的機関への恣意的統制を抑止する必要がある(もっとも私は議会優位の政治体制を容認する思想を持つため、実際には議会にそれらの権限が集中することについてはある程度までは容認して良いと考えている)。

公務員の中立性と独立性

◇公務員の中立性

全ての公務員(官僚含む)は憲法及び民主主義を尊重し、その範囲内で職務を遂行しなくてはならない。また、公務員には「中立であること」が求められるが、それはつまり公務員が公務に取り組む際には「公的機関や政治家集団の内の特定の派閥」や「国民の内の一部の集団」ではなく「国民全体」の利益の追及を目的として活動しなければならないということである(ただし、国民全体の利益を追求するために必要な範囲であれば、各公務員が国民の内の特定の層のみに公的なサービスを提供することは容認されうる)。公務員は自身にとって気に食わない相手とそうでない者のいずれにも同様の公的サービスを提供しなくてはならない。

◇公務員の独立性

もし時の政権が公務員に対する人事権を全面的に握りそれを行使するのであれば、政権が変わるたびに公務員の多く(とりわけ政権の不興を買う者)が入れ替えられることになりかねない状況となる。そしてそうなれば、公務員自身の生活は不安定となり、更には公務を実行するために必要な技能を身に着けた人間が退職させられることによって国家のサービスの質が低下する恐れがある。また、場合によっては、時の政権が自身が持つ人事権によって公務員に対して自らにとって不都合な人間に対して公的サービスを提供しないように圧力をかける可能性もあるだろう。以上のような問題の発生を防ぐためにも、公務員の人事については時の政権による過度な介入を抑止するための仕組みを導入し、政治家自身もそれへの関与を自制するように努めなくてはならない。

ただし、公務員の独立性をどの程度のものにするのかについてはあくまで民衆の代表あるいは民衆が決められるようにしなくてはならない。もし、それができないようであれば政治に民意によって定めることができない領域が発生し、政治体制に非民主的な部分ができることとなるだろう。政治家は法整備などを通して自らの公務員への統制能力に安易には解除できない形で枷をかけることでそれらの適度な独立性を実現するべきであるが、その枷の解除が不可能であったり度を越して困難であったりしてはならない。

◇公務員の中立性と独立性を達するための条件

公務員の中立性や独立性を保つために必要なものとしては以下のものが考えられる。

・政権による人事の制限
・政権によって発される強制力を伴う命令の制限 

ただし、公的機関の種類によって求められる中立性や独立性の程度は変わる。

公的機関設立

権力分立を機能させたいのであれば新たな公的機関の設立を分立された政治権力の内の一つが無制限に自在に行えるようにすることは好ましくない。例えば、もし行政府に単独であらゆる公的機関を設立することが認められているのであれば、行政府は自身に専属する武力組織を作り立法府や司法府に攻撃を行う可能性がある。従って、政治権力機関の新たな公的機関の設立については、行政府に対しては議会の承認を必要とするようにし立法府に対しては憲法と司法による制約を受けるようにするなどして、限界を設けなければならない。

追記:議会内部の権力分立が十分に実現されている場合には議会が外部から公的機関設立権を制限する圧力を受けることの必要性は小さいかもしれない。ただしその圧力を無くす場合外部の権力機関が議会を抑止する力は当然弱まることとなる。

公的機関の人事の形式

公的機関の構成員の人事については先述の通り分立する政治権力機関の内の一つが無制限に行えるようにすることは、その権限を握る機関による独裁を招く恐れがあるため不適切である。それらの人事権の行使は基本的には中立性が確保された第三者が関与する形で行うか、複数機関の同意を必要とする形で行われるようにすると良いだろう(※ただし所有する権限が十分に限定的である役職の人事については、その一部について特定の機関が単独で自由に行えるようにしたとしてもその影響力の小ささから直ちに民主主義が破壊されるようなことにはならないと思われる)。あるいは人事権を分割しそれぞれ別の機関に与えることによっても、特定の機関の権力の過大化の防止に繋がるかもしれない。ちなみに、人事権の影響力の大きさは、その対象となるポストの数だけではなくそれらのポストに就いたものが握る権力の大きさによっても定まる。

・中立性が確保された第三者機関あるいはその統制を受けた者による人事

・複数機関の同意に基づく人事
例えば、行政府が公的機関の人事権の一部を握る場合には、行政府がその権限を行使する際には立法府の事前の同意を必要とするようにしたり、行政府によって行われた人事に対して立法府が事後的に拒否権を行使することができるようにしたりすることで、実質的に複数機関の同意なしにはそれらの人事権が行使できないようにすることができる。ただし、ある機関による人事権の行使に他機関の事前の同意を必要とする場合は、その同意が迅速になされないことによる政治的混乱が大きくなるようであればそれに何らかの対策をしておくことが好ましい。また、人事権を持つある機関への抑止をその外部の機関に人事への拒否権を与えることによって行う場合には、その拒否権が行使されるまでの間の権力の濫用が過度なものにならないようにしなくてはならない。そして以上のいずれの場合も人事を否定する権限を持つ機関が、人事権の行使によって採用されようとしている人員に関する情報を十分に手に入れられないのであれば、その拒否権は形骸化する恐れがある点には注意しなくてはならない。

・分割された人事権による人事

ある組織の人事権を分割してそれぞれ別の機関に与えることで、特定の機関のその組織に対する影響力を限定することができる。例えば、6人から構成される公的組織を新たに設立しその人事を行う権限を既存の政治権力機関のいずれかに与えなくてはならないとき、その組織の構成員の半数である3人の人事権を政治権力機関Aに、もう三人の人事権を政治権力機関Bに付与することで、それらの機関のそれぞれの人事権の大きさを制限することができる。


人事権の行使による統制

官僚及びその他公務員の人事は時の政権が自在に決定できないようにする。そのうえで、政治家が必要に応じてそれらに対して要望(国益に基づく判断であれば従わないことも容認される)や強制力を伴う命令(法的に従う義務を課される命令。罰則が伴う命令。ただし政治家がこれを発することに対しては十分な制約を設ける必要がある)を出せるようにする。私の個人的な考えであるが、そのように公的な制度を構築すれば公務員の独立性がある程度は適切に実現されると思われる。

しかし、実際にはさらに一歩踏み込んで官僚組織の幹部の人事権についてはそのうちの一部を行政権が行使できるようにしたほうが、民衆の代表による政策の実行をより円滑かつ効率的に行えるようにするためには好ましいのかもしれない。ただし、その際には以下の方針及び条件が守られる必要がある

・行政権は自身が持つ官僚組織の一部人員についての人事権を、国益にかなう人材配置を行うことを目的として行使しなくてはならない。このとき政治家は自らが支持する政策を円滑に実施するために、自身の方針と合致する者や自身が実行しようとする政策に詳しい者を官僚として選抜してもいいが、自身の言いなりとなる者ではなく自身の方針の問題点を適切に指摘できる力と意志のあるものを選ぶように努めるべきである。

・行政府が自身が人事権を握る地位について誰でも登用できるようにすることは好ましくない。最低限の「憲法及び民主主義への理解及びそれを尊重する意思」と「職務遂行能力」は確保されているべきである。ただし、実際に組織を動かす権限をほとんど持たず、政治家に政策に関するアドバイスをするだけの役職であればそれほど慎重になる必要はないと思われる。

・外部から人員を採用する場合も、民主主義の尊重の意思や職務を実行する能力について最低限の確保が必要である。全く外部から官僚組織の幹部を採用する場合、採用される者がいくら特定の分野で非常に優秀であっても、官僚組織を実際に動かす技術を身に着けているかと言われるとそうではない。政治家が無制限に外部から人材を採用できるのであれば全くの素人が選ばれる恐れもある。ただし、この場合も組織を動かす権限を与えるのでないのであれば厳しく見る必要はないかもしれない。

・偏った情報のみを手にすることを防ぐため、政治家が人事権を行使することで自らに直接意見することができる立場にある者の全てを自身の思想と一致する者に置き換えられるようにしてはならない。

・政権がある地位に就いている官僚を自身の人事権を行使することで降格させた場合、その人の地位や報酬はある程度高いものとなるようにすることが好ましい。そうすることで官僚が政治家の顔色をうかがいながらそれに意見することをある程度防止できる。

・政権に官僚を自身が人事権を持つ特定の地位に就けないことは認められても、官僚を辞めさせることは認められない

・政権の不正を監視する公的機関の幹部については監視される側の政治権力自身が自在に扱えるようにするべきではない

・権力分立に影響を及ぼす可能性があるほど大きな権限を持つ役職に対する人事権については、行政権が立法府の賛同を得ずに行使できるようにすることは避けたほうが良い。

 

公務員の服従義務と政治家の命令の強制力

・公務員は政治家や上司からの職務上の命令に対してどのような態度を取るべきか
公務員は原則として政治家や上司による職務上の指示や命令のうち法的に従う義務のあるものについては従い、従わない義務のあるものについては従わないようにするべきである。そして従っても従わなくてもいいものについては公益を追求するという観点から従うかどうかを自ら決めるようにすると良いだろう。

・独裁化の防止と命令権への制約
国家の独裁化を防ぐためには、「公的機関の設立権」や「公的機関の人事権」を個人や少人数から成る集団(※行政府)に独占させないようにすることに加え、一部の人間が「公的機関あるいは公務員に命令を出す権限」を無制限に行使できる体制を作らないようにすることも重要である。

・命令権の強制力について

 

公的機関の構成の実例とその効率化

◇行政組織の基本的構成の例

世界の多くの国に共通してみられる行政組織としては以下のようなものがある
・司法省(司法制度を適切に機能させるための法案の作成や国民の権利の擁護に関わる省。検察や刑務所は多くの場合ここの管轄である)
・内務省(国内の治安の維持、消防や防災等。地方行政の管理を行うこともある。多くの国では警察組織はここに属する。日本では総務省がこれに近いが、警察組織は分離している)
・外務省(外交を担う省)
・国防省(国防を担う省。多くの国では軍はここに属する)
・財務省(財務を担う省。税の徴収や予算案の作成に関わる)
・経済省(国家の経済政策に関する省)
・福祉省(国家の福祉政策に関する省。厚生労働省等)
・農業省(農業や林業、漁業の政策に関する省)
・国土開発省(国土の開発や都市計画等の政策に関する省)
・文化省(教育や科学政策、その他文化に関する政策に関する省)

そして多くの国では以上の機関に加えて以下のような組織もある
・内閣府あるいは大統領府(内閣や大統領の総合的な支援をする組織)
・各種独立行政委員会

 

◇独立行政員会

 

◇組織の効率化

公務員の人数の増減は募集人数を増減させることで変える?

◇公務員となる者が最低限満たすべき条件
公的機関の職員を募集する場合には最低でも「憲法や民主主義への十分な理解及びそれを尊重する意思があること」及び「職務を遂行するために必要な能力があること」が確認できた者に限って採用するように努めるべきである。そして、その際に以上の条件を満たす応募者の人数が採用予定の人数を上回るようであれば、さらにそれらの人々の中からより職務を遂行する能力が高いものを選ぶようにすると良いだろう。逆に応募者の内それらの条件を満たす人員の数が募集した人数よりも少ないのであれば、より魅力的な報酬や労働環境の提示によって優秀な応募者を増やしたり、採用の条件を緩和したりすることで対処することになると思われる。しかし、後者の方法を用いることは公務員全体のレベルを下げることに繋がるのでできるだけ避けるべきである(※やむを得ず後者の方法を用いることになった場合にはより一層採用後の研修や教育を充実させなくてはならない)。

◇更なる優秀な人材の登用
各公的機関の内部の人事にその外部の機関が関わりすぎると、人事に関して統制を受ける側である機関の業務の実態をよく知らない者が非効率な人事を行うことに繋がる恐れがある。


◇人事の公平性の確保、透明化
・国民が公的機関の人事について直接決めるわけではないにしろ、政府によって行われたその人事の理由については基本的には自由に国民が把握できるようにするべきである。

・上司が個人的に気に入ったものを昇進させるようなシステムは認められない

・評価基準の明確化による恣意的人事の防止



政治家による公的機関の活用について

独裁者による公的機関の活用法に関する考察

もし私が独裁によって人々を幸福にしようとする古代の国家の君主であれば、「優秀な人間からなる官僚組織」及び「その指導の下で動く公的機関」を作成(それぞれ専門分野ごとに複数の組織に分ける)したうえで、基本的には国家の政策の立案と実行をそれらに任せるようにするだろう(だたし、政策の実行には事前に定めた例外に該当する場合を除き自身の承認を要するものとする)。そして、その場合の自身の為政者としての主な行いは以下のようなものとなる。

◇公的機関の監視、統制、管理
・監視
統制と管理のために公的機関の監視を行う
・統制
自身によって認められた権限の不当な行使や反乱をする者がいるのであればそれを是正する。反乱を企てる者がいれば当然それにも制裁を与える。
・管理
各官僚組織が全体的な戦略を考慮せず自分の専門分野の範囲内でのみ政策を考えることを阻止する。各公的機関間の利害の対立を解決し、それらに協力を促す。各公的機関に分配する政策を実行するための資源(給与含む)の大きさを決定し、それらを各機関に与える。公的機関の構成の変更などを通して制度の非効率性を是正する。

※以上の「公的機関の監視、統制、管理」については、それを補佐するための組織を作り(各機関内に設置することもある)それを活用しながら行うものとする。管理のための組織としては、自身による国家の総合的な政策の立案の補佐をするものも作られるだろう。ただし権力の簒奪を防止するためその組織に自身を介せずして他の組織を管理させることは認めないあるいは限定された範囲でのみ認める。


◇官僚によって立案された政策の承認
先述の通り官僚によって立案された政策を実行するためには自身がそれを承認する必要がある。


◇必要に応じて官僚組織に国家の政策に関する自身の提案や要望を示す
政策の立案については基本的には官僚に任せることとなるが、もちろん自分自身でも何もしないわけではない。自身も政治についての学習と洞察に継続的に取り組みもし優れた政策を思いついたのであれば、当然それを実行することを官僚組織に提案するだろう。そして、もしその政策に対して官僚から異論が出た場合にはそれをよく聞き、自身の案を修正あるいは破棄するべきであればそのようにし、そうでない場合はその理由を異論を出した者に説明してその人にその政策を実行するように促すのである。


◇必要に応じて官僚組織に強制力のある命令を下す
自身が最高権力者であるためには「自身に公的な機関の人員を強制的に従わせる力がある状態」を保とうとするのは当然のことである。ただし、為政者はそのように他者を強制的に従える力がある場合にもそれを用いて官僚に政策の実行を強いることは、基本的にはしないようにしたほうが良いだろう。何故ならば、強制的なやり方は反発を招くし、何より言論で説得できない程度の説得力しかない政策を無理に押し通すことはいい結果を招かない可能性が高いからである。従って官僚を動かしたいのであれば、基本的に言論による説得という手段を用いるように努めることが好ましい。

為政者が官僚に強制力を伴う命令を出すべき場面があるとすれば、「官僚が公益ではなく自己の利益の獲得を目的として実行すべき政策に反対している場合」や「官僚の能力が不足していることが原因で、それらが為政者の主張する優れた政策の意義を理解できずその否定に固執する場合」である。しかし後者を理由としてそれらを従えることは、官僚の能力不足が為政者の勘違いである可能性ことも多いためやはり極力避けるべきである。

為政者の能力が低いほどあるいは他者の提言を聞こうとしない性質が強いほど、それに部下を強制的に従えるための権力を認めないようにするべきである。また、為政者は自らが功績を上げたいという欲に駆られて、自身が詳しくない分野において強権を発揮するようなことをしてはならない。

※強制力のある命令とは、対象者に「自身がそれに違反した場合、自身にとって十分に不利益な形式の罰則が自身に与えられる」と予見させられる命令のことである。

 

民主国家の政治家による公的機関の活用の基本

民主体制下では以上の独裁者の役割を、いくらか内容を調整しつつも民衆によって直接的あるいは間接的に権力を委任された複数の機関が分担してこなすことになる。ただし、民主主義国家すなわち民衆が政治を決める国家であるためには民衆に選ばれた代表が高い能力を持ったうえで自ら主導して政策の立案を行っていくことが好ましい。


為政者自身の能力について

為政者自身の能力は官僚が優秀である場合にも高い方が良い。何故ならば能力が低いものが政治権力を握るとその権力を用いて誤った政策を強硬する可能性が高まり、更にその人が公的機関の人事権を持つ場合には不適切な人事が行われる恐れがあるからである。また、逆に、為政者の能力が高ければ、官僚組織内部の政策立案に関する思想が偏った状態で硬直している場合に外部をそれから是正することができるだろう。

民主国家における政治家の能力を高めるための方法としては、政治家自身の努力や国民の教養増強による政治家選出能力の向上がまず考えられるが、それ以外には行政機関に適切な情報開示義務を課したうえで、政党や議会に情報収集や政策立案のための組織を作りそれらの政治家の補佐をさせることが考えられる。あるいは公費で雇える秘書の数を増やすというのもありだろう。

 

<<前の記事|一覧 |次の記事>>