この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。
拡散
良い発想を生むにはとにかくたくさんのアイデアを出すという方法も有効である。私はアイデアを出したいときには、手元にメモ帳を用意して思いついたアイデアを手当たり次第に記録しながら考える。その際に重要なことは、よさそうだと感じたアイデアは、それが本当にいいアイデアかどうかなど判断せずとにかく大量に書き記すことである。そのアイデアが本当に使えるかどうかはあとから判断すればいい。その後、記録されたアイデアを見直すことで、さらにアイデアを生んだり、普段結びつかないようなアイデア同士を結び付けたりすることができる。
しかし私はただ思いついたアイデアを書くだけで十分だとは考えていない。拡散思考はアイデアの量に主眼が置かれた方法ではあるが、やはりできることならば出されるアイデアの質も確保するようにした方が良いだろう。そして、そのためにはこの後に示す本質洞察や根底疑念のような深い考察を行うことでアイデアを出すこともしなければならない。考察をせずに思いつくアイデアばかりを記録したとしても、質の浅いアイデアが集まるばかりである。拡散思考はとにかく大量にアイデアを出すことに主眼を置いているのだから質の低いアイデアを書くこと自体は問題ないどころか推奨されるものであるが、同時にその中に質の高いアイデアが含まれるようにする努力もした方がよいのである。なお、拡散思考の質を高める方法とそしては普段から良く学ぶということも考えられる。高度なアイデアは学ぶことによってはじめて生じるものも多い。学ぶことの大切さについては後に詳しく説明する。
収束
アイデアを拡散させた後は、アイデアをまとめることが大切である。ここではこのようにアイデアをまとめることを収束思考と呼ぶ。アイデアをまとめることでその全体を見渡すことができるようになる。例えば思いついた大量のアイデアを同じようなアイデアごとにグループ化することで、どこにどのようなアイデアがあるのか判断しやすくなる。どれが本当に使えるアイデアなのかを判断するのはこのときである。
アイデアをまとめなければ、のちにアイデアを見直すことが難しい。書きなぐられたままのアイデアはどこにどの情報があるのかを判別するのに時間がかかり、結局見直されないまま放置され、そのまま忘れ去られる。思いついたアイデアを有効活用したいのであれば、それを整った形で記録しておかなくてはならない。
拡散思考の質は、このような収束思考をすることによっても高められる。先述の通り収束思考は、既存のアイデアを確認することを容易にするし、アイデアをまとめることは、その記憶への定着を促進し、脳内でのアイデアの操作がしやすくなる効果を生じさせるからである。従って、以上の拡散と収束を繰り返せば、質の高いアイデアを大量に生むことができる。