この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。
高い才能や思考力を持っていたとしてもある分野を短時間で極められることは少ない。確かに時として天才といわれる人間が新しく参入した分野において僅かな時間で華々しい成果を上げることもある。しかしいくら才能があっても膨大な経験を瞬間的に体得できるわけではない。その才能を生かして考えることで他者にない発想をすることはできるかもしれないが、経験を積まなくてはできないようなことは継続的な活動により初めてできるようになるのである。経験により得られる技術まで含めてある特定の分野を極めたいと思うのであれば、継続的な努力を行わなくてはならない。
例えば将棋などは正に経験なしでは極められない分野である。私は将棋について詳しくないので踏み込んだことについては語れないが、将棋の才能だけで言えば現在の棋士の全てを圧倒できるような者がいるのだとしても、その人が全く将棋について知らないのであれば他の棋士に勝てるようになるまでにはかなりの時間が必要になることは間違いないだろう。何故ならば、いくら才能があったとしても将棋の対戦の経験を積むことでその最中の各場面における対処法などを予め十分に検証された形で習得しておかないかぎりは、対戦中の自らの判断に極めて大きな時間がかかり時間不足による敗北を免れないからである。
このように、世の中には才能だけでは極められない分野は存在するのであり、ある分野を真に極めたいのであれば経験が必要不可欠なこともあるのである。ただし、世界の情勢や自身の変化によりその分野での経験が不要になることもありうる。変化に対応したいのであれば特定の分野のみに自身の力のすべてを割くようなことはしない方がいいだろう。
