世界平和実現構想+α

世界の平和を実現するための方法を考えます

学校教育のあるべき姿

この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。

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なぜ学校教育が必要か

・身に着けさせるべき知識を確実に習得させる

学校がない場合にすべての子どもが自ら何かを学ぶとは限らない。勉強の重要性に気が付かず一切の勉強をしない子どもが出る可能性がある。また、自ら学ぶ子どもがいたとしても学ぶ内容が偏り、その子どもが自身の幸福を実現するためあるいは社会を適切に維持するために必要な知識や技能を一部しか身に着けない恐れがある。しかし学校で十分に練られたカリキュラムを習得させることで、学びの内容の偏りを抑えそれらをより確実に習得させることができる。

・身に着けさせるべき知識の一例

社会的な問題の解決策について他者に伝えようとする人は、前提となる基礎的な知識を知らない人間に対してはまずそれを理解させるところから始めなくてはならない。しかしその場合当然お互いの時間の消費は激しくなる。それを解決したければ、学校教育で人々に社会でよく使われる基礎的な概念等の知識を教えておくことと良いだろう。そうすれば、政治問題について語る際に相手に一から説明することを避けることができる。

・理解の補助

極めて有用だが学習者の自力の学習では理解が難しい知識というものが世の中には存在する。しかし学校に通っている者であれば教師が生徒の実力に合わせてわかりやすく説明することでその理解を補佐することができる。自力で学ぶ力を習得させつつも、難解かつ重要な知識を習得させる場合は学校でのサポートがある方が好ましい。各学校の教師の努力のみでは不十分であるのなら、わかりやすい教材を用意するということも考えられる。生徒のレベルに合わせた教材を用意した方がいい。今は動画教材やオンラインでの教育という手段もある。

・選択肢の増加

学校で幅広い知識を習得させることにより子どもの選択肢を増やすことができる。選択肢が増えれば好ましくない選択を回避できるようになる。しかし残念ながら世界には文字を読むことすら教えてもらえない子どもがいる。これでは新しくものを学ぶことも難しいので身動きが取れないだろう。十分に教育を受けることができない子どもがいる状況は直ちに改善されるべきである。また、女性が教育を受けることが妨げられている地域も存在する。女性も男性と同様に人類の一員であり、教育を受ける権利は当然確保されなければならない。これもまた速やかに改善されるべき問題である。

 


学校教育で実現を目指すべきもの

・子どもの現在および将来の幸福
・社会の適切な維持
・上記二項のための生徒の能力向上

 

能力向上のために提供されるべきもの

・最低限の知識及び技能を習得させるための教育
・考える力を生徒に身に着けさせるための教育
・学ぶ力を生徒に身に着けさせるための教育
・学ぶのに適切な環境
・生徒が知らない優れた選択肢の提示


・最低限の知識及び技能を習得させるための教育
子どもは自身が何を学べばいいのかを完全に見抜けるわけではない。従って先述の通り子どもの自らの学びに期待するだけでは子ども自身の将来の幸福を実現するうえで知らなくてはならないことを学ばないリスクがある。だからこそある程度は学校教育の内容を決定する立場の者が多くの分野の専門家を交えて子どもが学ぶべき知識を議論し、学校教育において子どもが学ぶべきものを策定しなくてはならない。
ただし、学校で教えられる知識も偏りが生じることは避けられず、さらには学校で教える内容の量が多いことは子どもの自主的な活動を阻害することにもつながる。子どもの時間を学校の勉強に過度に割かせることは避けなくてはならない。学校教育の効果の向上は、教育の時間を増やすことばかりではなく教育の質を増やすことによっても達せられる。時間を増やすやりかたにはいずれ限界が訪れる。

最低限というのは使う知識だけを覚えさせるということではない。使うことがないあるいは稀な知識であっても、子どもが自身が知らない分野に興味を持つきっかけを与えたり、子どもに世界の全体像を把握する力を身につけさせたりするために覚えさせるべき知識というものが存在する。

最低限とはいえ、例えば日本なら義務教育の期間だけでも9年間かけて学ぶものであり量はそれなりの多さになる。しかし今の教育制度でみられるように過度な知識を覚えさせる必要はない。


・子どもの自らの学びを支援する教育
子どもに考える力と学ぶ力を身に着けさせたうえで学ぶのに適切な環境を用意すれば、子どもは自らものを学び始めるだろう。さらに子どもにそれ自身がまだ気づいていない優れた選択肢を提示すれば、子どもがより良い方向に進むことを促すこともできる。


・学ぶのに適切な環境を用意することとはどういうことか。
私は学校が子どもの活動を支援する環境を提供する際には、まず子どもが調べたい情報や知りたい知識を得やすい環境を提供することを推奨する。少なくとも日本の学校にはそれぞれの学校ごとの図書館が用意されているが、さらにそれ以外の手段も用意できるものは用意すべきである。子どもが分からないことを相談できる相手がいるといいかもしれない。あるいは学校外で開催される学びにつながるイベントの情報の提供などが考えられる。

子どもの活動に必要な設備の提供することも推奨する。例えば、情報技術に興味を持つ子どものためにも学校でPCなどの設備を用意したほうがいいのかもしれない。全ての家庭が子どもにPCなどの機器を用意できるわけではない。周りに余計なものがあると勉強に集中できない人間は多い。自習室としての役割を果たすのもいいだろう。


・子どもが知らない優れた選択肢の提示
教育者は教育の一環として職業や進路について子どもが知らない選択肢を提示するようにするといいだろう。社会が変化する可能性があることを警告しつつ現在の社会で何が必要とされているかを判断する材料を提供するのもありかもしれない。また、学問の種類やそれらの構造を示すことで、子どもに何を学べばいいのかについての参考情報を与えることも有効である。


・教える力を身に着けさせる
何かについて理解ができない生徒がいるときは、それを理解している他の生徒にその内容を教えさせるようにしてはどうだろうか。もちろん生徒は教師ではないので教育内容を他の生徒に理解させる義務などを負ってはいないが、誰かに教えることは教える人自身の理解を深めることに役に立つので教えた側にもメリットがある。教える力の向上は政治に関する情報をわかりやすく説明できることにもつながるので民主主義の品質もあげられるかもしれない。

 


・子どもの知的好奇心を破壊するような教育は避けなくてはならない。
知的好奇心を高めることで生涯学習を実現することができる。学校で学ぶ量では足りない。生涯にわたって学び続けてもらうことで人民の能力は大幅に向上する。それは脳の老化の加速を防ぐことにもつながる。

 

幸福の実現のための教育

・子どもの内からの幸福の実現
自由な時間は十分に持たせるべきだろう。過度な宿題を出して家での時間をつぶしてはならない。
いじめに対する対処法もより高度に洗練されなくてはならない。いじめにより学校が苦痛になるようであってはならない。

・未来の幸福の実現
先ほど紹介した子どもが知らない選択肢の提示という手段は未来の幸福の実現のためにも有効である。進路の情報やいざというときの相談機関などを教えたりするといいだろう。

・危険の回避手段を教えること
危険な場所に近づかないことや危険な場面に遭遇したときの対処法などは十分に教えておいた方がよいだろう。

 

世界平和の実現及び社会の維持のための教育

・政治の教育
後に詳しく触れるが、私は世界の平和を実現するためには民主主義を実現することが大切であると考えている。従って、私は学校教育の場において民主主義とは何かということを生徒によく教えることを推奨する。その教育においてはなぜ民主主義がいいのかということが生徒に十分に説明されなくてはならない。また、民主主義についての教育においては、民主主義の衰退の例なども教える価値がある。

社会問題について子どもが積極的に議論する時間を用意するべきである。これにより実際の社会制度の知識を身に着けることができる。また、学校にいる間に自ら政治問題について情報を集めることもさせたほうがいい。教科書にある知識だけではなく、生徒が自ら調べることで実践的な能力を身に着けることができる。そして、生徒の側は幅広い情報を集めるようにするべきである。学生が政治に関する改善案を個人あるいは共同で考え、それを政治家に伝わる形で提出する機会を用意してはどうだろうか。もしかすると社会全体を根本から見直した非常に優れた改革案が上ってくるかもしれない。

政治制度について教え、なぜ政治に参加するのか、どのように政治に参加するのかなどについても教えるべきである。疑似投票や投票場の見学にでも行かせてはどうだろうか。

情報を取り扱う力に関する教育を行うべきである。情報収集の方法や、よくある統計の嘘を見抜く方法などを教えるとよい。


・道徳教育の実現
道徳教育はどのように行われるべきかについては現在考察中である。私はまだ道徳教育について十分な知見を持ち合わせていない。以下に現時点での私なりの道徳教育に関する見解を載せておくが、その内容は不十分である。

差別への反対。長期的に見れば社会における差別は着実に減少している。今は奴隷制を支持するものなどほぼいない。差別は完全にはなくせなかったのだとしても減らせないものではない。教育によりその減少を加速させることができるだろう。

病気や障害を持つ人への理解の促進すること。教育時間には限界があるため、全ての病気や障害を網羅できるわけではない。しかしそのうち社会でより広くみられるものや、より社会の理解が必要なものについて教えるべきである。そしてその他の病気や障害を持つ人についても自ら理解を進めることを教えるべきである。他にはけが人への応急措置法などを教えることもしておいた方がいい。心肺蘇生法などの指導がそれに当たる。

よくないものについて教えられないと気づけない人もいる。あらかじめ学校で不適切な行いを不適切である理由も添えて教えておくとよいだろう。例えばセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどが不適切であることは学校で教えておく価値のあることなのではないだろうか。

被害者の苦しみを想像できずに犯罪を起こしたり政府の道徳的に不適切な行動を支持したりする人も多いのではないだろうか。それを防ぐためにはそれらの被害を受けたものにどのような苦しみが生まれるのかを示しておくことも検討の余地がある。その際には無理にそれらの人の苦しみへの共感を持たせる必要はないが、事実については理解させておいた方が良い。

中には怒りを抑えられず衝動的に暴力事件を起こす人間もいる。これは教育において有効であることが実証された精神制御の方法などを教えるなどして対策できるのではないだろうか。

 

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