この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。
・最新の科学技術と独裁政権
私が世界の民主化を推し進める理由の一つとして独裁政権が新たに開発された科学技術を手に入れることへの警戒心がある。私には危険な側面がある科学技術に対する最も良い対策は、独裁者などの世界の一部の人間が自在にそれを扱えるようにすることを防ぎ、民意に基づいて民主的な方法でその監視と管理を行うことであるように思われる。
私は、この書籍の冒頭で述べた通り以前には人を超える知能を持ったAIを実現できると考えていた。しかしその後インターネット上で複数名の哲学者が汎用人工知能等はありえないと言っていたり技術者が今の技術の延長線上にはその実現はないと言っていたりするのを見てそれはできないと考えるようになった。そして現在の私はその時の名残でさほど根拠はないが心理的にはどちらかといえばそれは実現しないのではないかと考える側に傾きつつも、自身がそもそもAIについて全くの無知であることを認めそのような高度なAIが実現するかどうかは分からないとする立場に立っている。だがもしそのような私の内心の予想に反して実際に知能の側面において人間の完全な上位互換である人工知能等ができてしまえばどうなるだろう。おそらく独裁政権や独裁者は民衆の賛同を得ずに行使できる力を増やすことで民衆による抵抗により容易に対処できるようになるはずである。そして実際にそうなるとますます民主化は困難となり、もしかすると独裁政権が実質的にそれが不可能となるところまで支配を完成させることもありうるのかもしれない。また、現在民主化を求めない人々は、以上の話が実際には陰謀論のようなものであることから現実的であるとは捉えないのだとしても「独裁者が今後新たなテクノロジーを手に入れることは確実であり、それがよからぬ結果を招く恐れがある」という事実については十分に理解しておいた方が良いだろう。例えば、私は軍事技術やAIについては素人であるため確実なことは言えないが、独裁者は汎用人工知能などができなくともいずれは自律兵器の発達により民主化運動を弾圧を効率的に行ったり弾圧の実行者の罪悪感を低減させたりすることができるようになる可能性が高いと考えている。さらにはAIや監視カメラ、あるいはその他の技術によって行われる人民への監視もより強固なものとなっていくことは間違いない。そして今後実際にそのような事態になれば、やはり独裁政権はより盤石なものとなるはずである。
私は以上のような事態をおそれて世界には焦りによる失敗を避けつつも早めに民主化することを推奨するのである。また、今後は民主国家においてもますます民主主義の維持について多くの努力を割くことが必要になるかもしれない。何故ならば、国家に対する非暴力不服従の効力が今後技術の発達により弱まることがあるのであれば、現民主国家が独裁国家化した場合に再び民主化することも容易ではなくなるからである。
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