この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。
※以下は安全保障の素人の私の脳内考察に基づいた見解である
安全保障の基本
真の目標に基づいて安全保障を考える
安全保障政策については国民の安全の確保などの真の目標に基づいて考えなくてはならない。目先の感情や自身の政治的な立場に惑わされてその目標を忘れてはいけない。
抑止のための利害調整
相手が武力行使をした場合に相手自身に生じる利益と損失について、利益の方が大きければ相手が武力を行使する可能性は高くなる。逆に損失の方が大きければその可能性は低くなる。相手にことを起こさせたくなければ武力行使を起こした場合の損失が利益を上回るようにすることが大切である。しかし相手の判断の誤りにより、相手の側にとって損失の方が明らかに大きい場合であっても相手が攻撃をしてくる恐れはある。例えば相手が武力行使を行った場合の損失の大きさに気が付いていない場合や、相手が冷静さを失っている場合などは判断を誤る可能性が高まる。もし、相手が攻撃に伴う損失の大きさに気が付いていない場合は、その事実に気づかせるべきである。また、相手が冷静さをうしなっている場合は、相手が冷静さを取り戻すように努めなくてはならない。そして、相手に不必要に攻撃的な言動を行うなどして相手の怒りを誘発することは普段から避けるように努める必要がある。
相手国の指導者が自身が冷静ではないかのようにみせかけてこちらの譲歩を迫ってくることもあるかもしれないが、その場合は当然それを見破りその策に乗らないように努めなくてはならない。また、相手はこちらの行いのうち悪くないものに対しても悪いものであるかのように表現することがあるが、その場合は冷静にそれを否定しなくてはならない。
ときにはこちらに大きな損傷が生じることも覚悟しなくてはならない場合がある。目先の損失を回避することばかりに気を取られ長期的により大きな損失が生じるようなことは避けなくてはならない。
自身の考えを過信しないこと
我々は相手の動きについてできる限りの情報収集と洞察を行うべきであるが、どれほど努力したとしても相手の出方を完全に読むことはできない。自身の予測を過信せずに、予測を外した場合の対策も十分に行っておかなくてはならない。
特定の策があるから他は用意しなくていいなどと思い込んではならない。例えば武力行使なしに交渉で平和を保つという心がけは素晴らしいものではあるが、それを絶対視して交渉に失敗した時の対策を行わないという態度をとることはそれに失敗した場合に人々に致命的な損害をもたらす可能性がある。
万が一の場合に備えてあらかじめよく準備をしておくこと。有事の際には、混乱を最小限に抑えて速やかにその問題に対処しなくてはならない。また、損失を回避しきれないのであれば損失を最小限に抑えるように努めなくてはならない。国民自身も有事の際への対策をよく考え、事前に備えを用意しておくべきである。有事のために法を整えるなど。
軍拡
・軍拡と利益
軍事力の拡大を最大限に行うことが常に最善の選択であるとは限らない。軍事力の拡大を行おうとすれば相手も同じようにそれを拡大する。そして、結局相互に大きな資金を用いる一方で軍事的には両者が拮抗した状態が変わらないなどということになる可能性がある。そうなれば安全保障上の利益が大して得られないにも関わらず、双方が多くの資金を消費したことにより長期的に衰退するおそれがある。このような状態を防ぎたければ、相互に自制と相手への牽制を行いつつ必要に応じて双方の軍備に制限をかけるような条約を結ぶことが必要である(とはいえ相手が自制をしないのであればこちらも相応に自制を緩めることはやむを得ない。また、相手が隠れて軍事力を増強することについても十分な対策を行っておかなくてはならない。もし相手の隠れた軍拡を正確に見抜くことができないのであればこちらもやはり相応に軍事力を強化しておかなくてはならない)。
・軍拡競争と大国への対処
ある二か国の間に大きな潜在的国力の差がある場合、力のある側が軍拡競争で長期的に相手を押し切ることができる可能性が高い。それを避けたければ国際的な協力関係を築いて総合的に押し切られないだけの力を得られるようにした方がよい。そのためにも私は民主国家には自国のみに捉われずに多くの国の間でよく連携を取ってほしいと考えている。現在世界に存在する民主国家が十分に協力すればその他の国に押し負けることはないだろう。ただし、その連携は相手を打倒するためのものであってはならない。現在独裁的な国家についてもいずれはこちら側についてもわらなくてはならない存在であるが、それを敵とみなしてしまえば相手とこちらの間にある対立は深まる一方である。また、民主国家と独裁国家の間でも協力できる分野は存在する。
相手がどのような策でも押しつぶせるほどの力を身に着けてしまえば、いくら策を練ったのだとしてもそれに対抗できなくなる。そうならないように事前に対策を打っておく必要がある。手遅れになってからでは遅い。
軍事力の評価
二つの国の間の兵や武器の数の差がそのまま戦争におけるそれらの国々の実力の差に繋がるわけではない。多くの信頼できない他国が付近にあったり内乱のリスクがあったりする国は兵力を国内に分散して配置する必要があるので、必然的に特定の国に割ける軍事力の大きさは小さくなる。
また、現時点で武器が少ない国であっても生産力が高い場合には長期的にはそれは改善される。
経済関連
重要資源の入手を一か国に依存することは避けたほうが良い。その傾向が強いほど、有事の際にその国の意に反する行為を行えなくなる可能性が高まる。(※ただし、その資源の供給元を普段依存している国からの入手が困難になった場合に速やかに切り替えることができるのであれば大きな問題にはならない...かもしれない。)
友好
信頼や友好のみに頼った協力も無意味ということはなく時にはそれがより良い選択となる場合もあるが、その効果の確実性は高くはない。安全保障において他国との協力をより確実なものとするためには、条約やその他の手段によって協力の義務を明確にし、その明確にされた義務を放棄することと放棄しないことのどちらの方が得策であるかを考えた場合に後者を選んだほうが得策であると相手に思わせられる状態を作り続けなくてはならない(条約を破った場合に国際社会からの信用を失うことになるという状況が存在すると、おのずと相手国に条約を守らせるための圧力が働くこととなる)。また、相手国との間で何らかの条約を結ぶ際は、相手がそれを守る確率がどの程度であるのかを十分に調査したほうが良い。
敵意を向けないことも安全保障政策の内である。敵意を向けずとも警戒すべきものに警戒することはできる。深められる友好は深めておくべきである。
核兵器について
世界には日本が現在核兵器禁止条約を批准していないことについて批判をする非核保有国があるようだが、日本や韓国のような核を持つ独裁的国家が付近に三つ(中国、ロシア、北朝鮮)もある国家に対してそれらの安全の確保に十分な注意を払わずにその条約を批准することを迫り、さらにはそれに従わなかった場合に道徳的な観点から非難するということは無責任である。もちろん核兵器の脅威には対処しなくてはならないが、私は日本を取り囲む現実を考慮すると日本がその条約に署名することには賛同できない。核が廃絶されることがあるとすればそれは世界の国家が十分に民主化を果たしたときである(その場合についても、地球外生命体による侵略が現実的な可能性としてある場合には、それと核を悪用する者がでるリスクを比較しつつ核を維持することは検討したほうが良いかもしれない。)。
核保有国は非核保有国に核兵器を持つことを認めないというのであれば、非核保有国が他の核保有国によって核攻撃を受けるのを責任をもって防ぐべきである。ある国が自身の都合で別の国に対して核保有を禁じておきながら、実際にその国が他の核保有国に脅かされたときに自国には関係がないことから見て見ぬふりをするというのは、道徳的に極めて大きな問題がある態度であるといえる。また、非核保有国が核保有国に侵略された場合に他の核保有国がそれを止めないのであれば、非核保有国は核保有国になすすべなく甚大なる被害を与えられるしかないということが全世界に公開されることになる。そうなれば他の非核保有国が核を保有しようとする可能性は高まることとなるだろう。それを防ぐためにはやはり核保有国は非核保有国の核に対する防衛に責任を持たねばならない。
もちろん核拡散によって損失を被るのは非核保有国も同様である(※核兵器が拡散すると周辺の敵対的国家が核兵器を持つ可能性があり、核兵器の十分な管理能力のない国家が核兵器を持った場合にはテロリスト等やそれに近い組織が技術者ごとそれを奪う恐れがある)。従って非核保有国も核保有国に対する防衛の全ての責任を他の核保有国に押し付けることはせず、自ら核保有国との戦争を防ぐ努力を行わなくてはならない。
非核保有国が核保有国に侵略される場合、それ以外の国は自国に核が落とされることなどを懸念して侵略された国家の防衛への支援を避けようとする可能性がある。しかしこのような態度は度が過ぎれば他の非核保有国に「自国が核保有国に侵略された場合には他国の支援が望めないことから侵略国に対する十分な抵抗力を確保できない恐れがある」という考えを抱かせることになり、さらにはそのような状況になることへの対策として自国も核兵器を持つべきだと考えさせることに繋がる可能性がある。従って、実際に核保有国による非核保有国への侵略が合った場合には、核拡散を防ぐためにもやはり非当事者である国はある程度のリスクを負ってでも十分な支援を被侵略国にするように努めなくてはならない。
<<前の記事|一覧 |次の記事>>