この記事は書籍「世界の基礎」の一部です。
有利な環境とは
環境は人の能力に大きな影響を与えるが、有利な環境とはどのようなものだろうか。ある環境がそこにいる人に有利なものとなるために必要な条件はいろいろあるだろうが、私はその一つとして質の高い情報の入手のしやすさがあるのではないかと思っている。質の高い情報を多く持っていれば、考えることの質も高めやすいだろう。例えば世界でもトップクラスの研究がおこなわれている研究室に属する研究者は有利だし、資金力が豊富な人も情報を集めやすい環境を構築できるのでこの点で有利である。
あるいは研究者なら、研究資金が獲得しやすい環境にいる者も有利かもしれない。研究資金の獲得に多くの時間をかけなくてならない場合は当然研究の時間は削られる。また、生活すらままならないような研究者はもっと不利だろう。日本では生活のために目先の成果を求めざるを得ないような研究者が増えていると聞くが、そのような状態ではじっくりと真に価値ある研究に取り組むことも難しくなる。
科学技術の発達により思考をサポートする道具や技術が充実した環境にいることも、思考力を高めることにつながる。人類はその歴史において、文字や紙を発明し、ついにはコンピュータを生み出した。それによりそれ以前には処理しきれなかった膨大な量の情報を取り扱えるようになっている。今後も技術の発展により人類が扱える道具が進化し、それは人類の思考力の強化に寄与するだろう。遠い未来に脳を強化する技術が実現する可能性もあるかもしれない。もっともそれがいいものであるかどうかは別の問題である。